雨が降っていた。


落ちた雫が大地に小さく穿ちそこへ絶え間なく降り注ぐ






どしゃ、どしゃと なにかがぬかるんだ大地を歩く






時折何かを踏み潰す決して耳障りのよくない音がする


何を踏んだかと光のない両眼を落とせばかろうじて人間の一部分だとわかるモノ







―声が聞こえる








コワセ、コロセ、ホロボセ、我らと同じ苦しみを








『我らの声を聞け…』



ザザザと突如、ゆらりと歩く者を取り囲む兵士




「捕らえろ!!」








『我らの嘆き、風の謳歌を聞けぬこと』







一人、









『我らの悲しみ、母なる海の抱擁を受けられぬこと』








一人、









『我らの苦しみ、常夜の闇に縛されしこと』







また一人、



どす黒い色に変わり果てたレイピアが兵士を捉える






『我らの声を…我らは誇り高き…』





―コワセ、コロセ、ホロボセ











そこにはほんの数分前まで存在していた村の荒廃した赤黒い台地が広がっていた










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