「私はここで失礼する。アリエッタをダアトの監査官に引き渡さねばならぬのでな。」




―Episode.5




「えぇ〜?!師匠も一緒に行こうぜ!」


キャツベルトから降り、ケセドニアマルクト側の領事館前でヴァンがアリエッタを抱えたまま一時の離脱を伝える。
ルークにしてみればアリエッタなど放って置いて自分の側に居てほしい。
自分の気持ちを精一杯正直に打ち上げるがヴァンは苦笑するだけだった。



「後から私もバチカルへ行くわがままばかり言うものではない。」
「…だってよぉ…」
「船はキムラスカ側から出る。向こうの領事館に行きなさい。」



ルークは渋々ヴァンに言われたようキムラスカ側の領事館へ向かった。
領事の話では出航にまで今しばらく時間がかかると告げらる。
ルーク達はこの町の大商人アスター邸に音譜盤の解析気があると聞きついでに寄っておくことにした。
国境を跨って立つ豪邸の主人アスターは見てくれこそ怪しげな印象をかもし出してはいたが、ルーク達の依頼を快く引き受けてくれた。
ただその解析機から出てきたデータの量が思ったよりも膨大で厚めのノート2冊分はある。
それをガイが受け取り屋敷を出たところで丁度、キムラスカ兵が出航準備が完了したと伝えに来た。


そのままルーク達が酒場の前の広場へ足を踏み入れたとき。




「そいつを寄越せ!」


街道の奥の方からシンクが飛び出してきた。
シンクはガイが抱えていた解析データの本を見つけるとそこへ向かって俊足で突進する。

「うわっ!」

ガイは避けこそしたもののバランスを崩し倒れる、その瞬間シンクがガイの腕に触れた。




「…!」



しかしガイは何事もなかったかのようにデータを拾い集めシンクから離れた。



「ここで諍いを起こしては迷惑です、船へ!」

ジェイドの言葉を合図にルーク達は一斉にキムラスカ側の港へ走り出した。



「ルーク様出航準備完了してお…」
「急いで出航しろ!!」
「は?」
「追われてるんだ急げ!!」


ルークがミュウを抱えたまま船に飛び乗ると同時に船は一気に最高速度まで足を速め港を出た。
そこに数秒遅れでシンクが着く。




「…くっ、逃したか。」





「ハーッハッハッハ!」


苦々しく言葉を吐いたシンクの上空から、特徴的な高笑いでディストが降りてきた。



「ドジを踏みましたねシンク。」
「アンタか。」
「後はこの私に任せなさい。
 超ウルトラスーパーハイグレードな私の譜業であの陰湿なロン毛眼鏡をぎったぎたの…」

ディストが自信満々に言い終える前にシンクはスタスタとディストに背を向け歩き出していた。



「まてぇえ!まて、まちなさい!!私の話がまだ終わってない!!」
「あのガイとか言うやつはカースロットで穢してやった、いつでも傀儡に出来る。
 アンタはフォミクリー計画書類を確実に始末してよね。」

それだけ告げるとシンクはさっさと姿を消した。

「むきー!!えらそうにいぃぃ!覚えていなさい!!復習日記につけておきますからね!!」









「ここまでくれば追って来れないよな。」


連絡船の一室でルークが息をぜーぜー吐きながら誰に聞くでもなく言った。



「くそ、烈風のシンクに襲われたとき書類の一部をなくしたみたいだな。」
「見せてください。」


ジェイドがそういうとガイはジェイドの側に歩み寄り書類を渡す。
ガイがそこから離れ船室の壁に寄りかかったのを見てもジェイドの側に寄り書類を横目で見た。



「…同位体の研究、か?」
「そのようですね、3.14159265358979323846…これはローレライの音素振動数か。」
「ローレライ?同位体?音素振動数?…わけわからねぇ。」


頬杖をつきながら吐き捨てるルークに一瞬その場の空気が止まる。
それを補うようにティアが口を開いた。




「ローレライは第七音素の意識集合体の総称よ。」
「音素は一定以上集まると自我を持つらしいですよ、それを操ると高等譜術を使えるんです。」
「それぞれ名前がついてるんだ。第一音素集合体がシャドウとか、第六音素集合体がレムとか。」
「ローレライ自体はまだ観測されていない。いるのではないか、という仮説だ。」

ティア、アニス、ガイ、がそれぞれ順を追って簡単に説明する。
ルークは一つずつ意味を理解しているというよりただ単に聞き流しているようだった。



「はー、みんな良く知ってるな。」
「まぁ…常識なんだよ、本当は。」
「仕方ないわこれから知ればいいのよ。」


ガイが言いにくそうに言ったところでティアが穏やかな声でルークをフォローする。
アニスはそれにいち早く気づき、二段ベッドの上階から怪訝そうにティアに口を開いた。



「なーんかティアってば突然ルーク様に優しくなったね。」

アニスの言葉に頬を少し赤らめ慌ててアニスに振り返る。


「そ、そんなことないわ!そ、そうだ音素振動数はね全ての物質が発しているもので指紋みたいに同じ人はいないのよ。」
「物凄い不自然な話の逸らせ方だなぁ。」
「ガイは黙ってて!同位体は音素振動数が全く同じ二つの固体のことよ。人為的に創らないと存在しないけど。」
「まぁ同位体がそこらに存在していたらあちこちで超振動が起きていい迷惑ですよ。
 同位体研究は兵器に転用できるので軍部は注目していますねぇ。」

ジェイドが音譜盤の解析データをパラパラとめくりながら補足する。


「昔研究されてたフォミクリーって技術なら同位体が創れるんですよね。」

アニスの何気ない問にジェイドは一瞬眼の動きを止める。
ジェイドの背後にいたが代わりに口を開いた。


「いや、フォミクリーで創られるレプリカは所詮ただの模造品。
 見た目こそ瓜二つだが音素振動数は変わってしまう。要するに完全な同位体ではない。
 生物に転用するという実験もあったらしいがレプリカにも被験者(オリジナル)にも悪影響が出てしまったとか…
 道義的にも技術的にも問題があったから禁忌として廃止してしまったようだが。」
「…どこまでご存知なんですかは。」
「・・・・・・。」



「あー!もーわけわかんね!その書類はジェイドが…」


そこでいきなり船体が爆音と供に大きく揺れた。
ルーク達の部屋にキムラスカの兵が一人駆け込んできた。




「た、大変ですケセドニア方面から多数の魔物と正体不明の譜業反応が!」





ただ船ごと沈める気なら神託の盾騎士が直接乗船してきて攻撃してくるのはおかしい。
ルーク達は船をのっとられる前にブリッジを確保しようとデッキを走った。





「はーっはっはっは!はーっはっはっは!」

ルーク達が敵の首領を探そうと船の舳先へ来たところで少々耳障りな声が響いた。
立ち止まって声が聞こえてきた上空を見上げると見飽きた譜業椅子が下りてくる。



「野蛮な猿ども篤と聞くがいい美しき我が名を!!我こそは神託の盾六神将薔薇の」
「おや、ハナ垂れディストじゃないですか。」

意気揚々と名を名乗ろうとした直前ジェイドがからかうように口を挟んだ。



「薔薇!バ・ラ!薔薇のディスト様だ!!」
「死神ディストでしょ?」
「だまらっしゃい!そんな二つ名認めるか!薔薇だ薔薇!!!」


「…ジェイド、こいつ斬っていいか?激しく鬱陶しい。」
「あははは〜お気持ちは充分すぎる程に判りますがやめておいたほうがいいですよ、ハナ垂れがうつってしまいますから。」
「うつりませんよ!!そもそもハナ垂れじゃありません!!」


「なんだよ知り合いなのか?」

余り息のあっていない漫才でも見てるような空気の中でルークがアニスたちに聞く。
アニスは自分がディストと同じ神託の盾だからと答え一見何のつながりもなさそうなジェイドに不思議そうに聞いた。
ジェイドが答えるより早くディストが空中からジェイドを指差した。


「そこの陰険ジェイドはこの天才ディスト様の嘗ての友!」

ディストの回答にジェイドは心底ウザそうな表情に変わる



「何処のジェイドですかぁそんな物好きは。」
「なぁんですってぇえ!!?」
「ほらほら〜怒るとまた鼻水が出ますよ?」
「キィィィ!!出ませんよ!!!…!  …まぁいいでしょう、さぁ音譜盤データを渡しなさい!」

ぜぇぜぇと勝手に息を切らしていたディストが呼吸を整え言うとジェイドは「これですか?」とあっさりと懐からそれを取り出した。
無防備に取り出されたそれにディストが眼を光らせ物凄いスピードで其れを奪い去った。



「ははは!油断しましたねジェイド!」
「差し上げますよ書類の内容はすべておぼえましたから。」
「…ムキー!!猿が私を小ばかにして!
 この私のスーパーウルトラゴージャスな技を喰らって後悔するが…」
「天に掲げし海神の鉾 呼応するは破邪の水龍 下せ 断罪の審判。」
「え?」
「『ネレウス トライデント』!」


ディストが何かしでかそうとした直前にが譜術を放った。
海上に三つの渦が発生しそのまま渦を巻きながら竜巻のような水柱が立ち一気にディストを襲う。

「ちょ、ま…ぎゃああああ!!」



何事か叫びながらディストは遥かかなたへ吹き飛ばされた。



「ナイスタイミングです。」

すっきりしましたと付け加えながらジェイドが含みのある笑顔で言った。
ルークやガイたちはディストが飛ばされていった方向を唖然と眺めていた。



「おい、あれ…。」
「殺して死ぬような男ではありませんよ、ゴキブリ並の生命力ですから。それよりブリッジを見てきます。
 、…貴方も手伝ってくれますね。」
「…承知した。」
「俺も他の機関部を見てくるよ、女の子達はルークとイオンのお守りを頼む。」


ジェイドが意味深な視線をに送り、二人が船内へ戻る後ろへガイが付いて行く。
その場に残されたティア達は怪我をしたものが居ないか見て回ることにした。






「それで…?」


ブリッジにいた船員が怪我をしていた為ティア達のところへ行くよう指示し、ジェイドと以外誰もいなくなったところで言った。



「なんでしょう。」
「…私になにか話しがあったのだろう?」


ジェイドがに背を向け舵の先の大きな船窓に寄った。はただ其れを黙って目で追う。
少しの間を置きやがてジェイドが口を開いた。



「話し、というよりは聞きたいことが、ですね。」
「…こんな所で尋問か。」
「ハハ、なかなか乙だと思いませんか?…まぁとにかく。」

そこでジェイドは眼鏡を直しへ振り返る。




「あなたは何処まで知っていて、そして何処まで気付いているんですか。」
「…なんのことだ。」
「嫌ですねぇとぼけないでくださいよ。」


口だけで繕った笑みを浮かべ、両眼はタルタロスで見せたあのピジョンブラッドでに近づいた。
コツ、コツとジェイドの靴音が何故か船の機械音を打ち消して耳に響く。
もともと壁際に立っていたの背が壁につくのに時間はかからなかった。
体勢的には追い詰められ、上から刺すような視線を浴びているにも関わらず、はジェイドの両目から黒曜の瞳を逸らさない。



「あなたは私の旧姓を知っていました、そしてフォミクリーのことも。
 どうしてです?そして此れに関連することを何処まで知っているのですか?
 もう一つ。タルタロスでアッシュと対面した時、コーラル城でシンクと一戦交えたとき。貴方は何かに気づきましたね?」
「・・・・・・。」
「…貴方に黙秘権はないと言った筈ですが。」
「答え「『答え』があることには答えるのでしょう?タルタロスでそう言ってましたよね。」

言葉を遮り、ジェイドは左手をの顔の直ぐ横についた。
そのままジェイドは更に体を近づけた、体勢が変わればタルタロスの時とほぼ同距離にまで接近している。



「確信のないあくまで仮定の範囲の答えならある。それでもいいのか。」
「聞いているのは私です。」
「それに答えることはむしろ私でなくお前の首を絞めることになるかもしれないが?」
「聞いているのは私ですと言ったでしょう。同じことを言うのは嫌いなんですよ。」


カラン、とジェイドが空いた手での仮面を外して足元に落とした。
声色にやや焦燥と苛立ちが見えるが、ジェイドはそれをかき消すようにそのまま仮面を取った手をの顎に添え顔を近づける。



「アッシュとルーク、そしてこの二者とフォミクリーの関連性から一つ結論は出ている。」
「もうひとつは?」
「シンクと…イオン殿。」
「!」
「あくまでも仮定だ。フォミクリーの生物転用実験も噂でしか聞いたことがない。」
「では最後に、私の旧姓やフォミクリーを知っていた理由は?ただ噂で流れるようなことではないはずです。」
「・・・・・・・。」


再び黙り込み視線を外したにジェイドは顎に添えていた手を首輪のほうに移した。





「一つ教えて差し上げましょう。このリングは貴方が一定以上離れなくても私の意志で首を絞めさせることもできるんです。
 一気に楽になれないよう徐々に徐々に…ね。私がこのまま合図を出せばそうなりますよ。」
「…わからぬ。」
「なにがです。」
「知っている理由がわからぬ。何故か知っていた、としか私にも言えない。」
「また妙な言い回しで誤魔化す気ですか?」
「そう思うならリングを絞めればいい。」



そこまでいくとジェイドが盛大に溜息をついた。
そしてリングから手を離し壁についていた腕も戻して一歩下がる。



「脅し甲斐のない人ですね、まったく。」





「おーい旦那、こっちは粗方片付い…と、悪い、…取り込み中だったか?」

二人の間に沈黙が流れた瞬間ガイがブリッジのドアを開けて入ってきた。
しかしなにやら尋常ではない二人の空気を肌で感じたのか扉を開けた体勢のまま止まる。



「いえいえ此方も丁度終わったところです、ご苦労様でしたガイ。」
「あ、あぁ…。」

何事もなかったかの様にいうとジェイドはガイの横を通りすぎブリッジを出て行った。
ジェイドがブリッジのドアを閉めたためガイは出るタイミングを失った。
ガイがの方に振り向くと彼女は丁度床に落ちた仮面を被りなおしているところだった。


「何を、話していたんだ?。」
「…尋問…。」
「じ、尋問?」
「私はあの男の、というよりお前らの捕虜だからな。」
「・・・・・。」
「ガイ。」
「な、なんだ?」


まさかこの展開で自分に話しかけられるとは思っていなかったガイはやや驚きながら答える。




「お前、ケセドニアでシンクが強襲してきた時すれ違いざまに腕に何かされただろう。」
「え、あぁ。…良く見えたな、あんな一瞬の事。」
「…何の影響や支障もないのか?」
「ん?あぁ別に痛くもないしなんとも…。」

ガイは攻撃を受けたほうの腕をぷらぷらとさせながら言った。



「ならいい。それだけだ。」

短く答えるとはブリッジの出口へと向かった。
体質故に一瞬ガイはひるんで離れるが、は一切気に留めずドアに手を掛けてガイに背を向けた。



「ありがとう。」


不意にの背中にガイが声を掛けた。それを聞き彼女の動きが止まる。


「…何のことだ。」
「その…心配、してくれたんだろ?わざわざ皆が居ないところ…」
「別に…好きに解釈すればいい。」




それだけ言うとは扉を閉めて出て行った。







「なんで…笑ってんだ?俺…。それに…」

ガイは船窓に写る自分の顔を見て頬が緩んでいることに気付いた。





は…本当に村を消滅させた『大罪人』…なのか…?










「ここが…バチカル?」


船への強襲が一段落着いた後そう時間も経たない内に船は丁度バチカルに到着した。
港から天空客車で城下へと上ったところでルークが天高く聳えるバチカル城を見上げていった。



「なんだよ初めて見たみたいな反応して。」
「仕方ねぇだろ覚えてねぇんだ。」
「記憶失ってから外には出てなかったっけな…。」

ガイが居た堪れなさそうに言っている背後でアニスが口を開いた。

「すっごい街!縦長だよ!」
「チーグルの森の何倍もあるですの!」
「…空の譜石が落下して出来た窪みに造られた街だとは聞いていたが…此れほどまでとは…。」
「よく知ってるな、その通りさ。」
「自然の城壁に囲まれているって訳ね。合理的だわ。」





―くそ、ちっとも帰ってきた気がしねぇや。




各々が感嘆の声を上げている背後でルークが歯痒そうにそう呟いた。
ガイはそんなルークの気分を察したのか、少し城下をうろついてから城に向かおうと提案した。





「只今大詠師モースが陛下に謁見中です。暫くお待ちください。」
「モースってのは戦争を起こそうとしてるんだろ?叔父上に変なこと吹き込まれる前に入ろうぜ!」

一通り街を巡った後でバチカル城に登場したルーク達だったが、謁見の間の前の兵士に止められる。
しかしルークは強引に突破しようとした。
当然兵士は黙っておらず「お止めください!」と咎めるがルークは自分の名を明かし、自分の父親の権限でお前をクビにすると脅して黙らせた。





「無礼者!誰の許しを得て謁見の間に!」
「うるせぇ!黙ってろ!!」


モースが虚実を陛下に進言している途中でルークが扉を蹴破らんばかりの勢いで割り入った。
陛下の側近が声を張り上げるがルークは更に大声で黙らせる。
無礼千万な侵入者に陛下は動じることなくルーク達を見やった。




「その方は…ルークかシュザンヌの息子の。」
「そうです伯父上。」
「そうか話しは聞いている、よくマルクトから無事に戻ってくれた。すると横に居るのが…」
「ローレライ教団の導師イオンとマルクト帝国軍のジェイドです。」
「ご無沙汰しております陛下、イオンにございます。」

ルークが簡単に紹介だけするとルークの後ろに居たイオンが前に進み出た。
陛下の目の前に居たモースはイオンの姿をみるとあからさまに動揺する。



「ど、導師イオン、お、お探ししておりましたぞ。」
「モース、話は後にしましょう。陛下、此方がピオニー9世陛下の名代ジェイド・カーティス大佐です。」

なんとか話を逸らそうとしたモースにイオンが冷静に、それでいて何処か迫のある物言いでいさめる。
そのまま陛下に向き直りジェイドのことを説明するとジェイドも前に進み出た。


「御前を失礼します、我が君主より偉大なるインゴベルト陛下に親書を預かって参りました。」

膝を着いてそう告げるとアニスが持っていた親書を渡した。
それを見ていたルークは釘を刺すように口を開く。



「伯父上、モースが言ってる事はでたらめだからな。俺はこの目でマルクトを見てきた。
 首都には近づけなかったけどエンゲーブやセントビナーは平和なもんだったぜ。」
「な、何を言うか私はマルクトの脅威を陛下に…」
「うるせぇ!戦争を起こそうとしてやがるんだろうが!お前マジうぜーんだよ!!」
「ルーク落ち着け、こうして親書が届けられたのだ、私とてそれを無視はせぬ。
 皆の物、長旅ご苦労だった。まずは旅の疲れを癒されよ。」

今にもモースに食いつきそうな勢いで言葉を張り上げるルークを静かに陛下は諌める。
今晩は城に使者全員分の部屋を用意すると言われたためルーク達はその場を後にした。
そのままイオンの「ルークの家を見てみたい」という希望によりファブレ公爵邸へ向かうことになった。






「ルーク!」
「…げっ。」



途中、陛下の妹であるルークの母シュザンヌが病に臥したと話しを聞き、ひとまず自分が無事だという姿を見せようとしたルーク。
シュザンヌの私室へ続く会議室の扉を開いたとき、華麗な金髪の少女がルークに気づき声を上げた。



「まぁ、なんですのその態度は、私(わたくし)がどんなに心配していたか…」
「いや、まぁナタリア様。ルーク様は照れているんですよ。」

ルークのあからさまな反応に腰に手を当てながら咎めるとガイはすかさずフォローを入れる。
しかしその言葉にナタリアはキッとした表情でガイを睨んだ。



「ガイ!あなたもあなたですわ。」

怒りの矛先をガイに向けずんずんとガイに近づきながら追い詰める。
ガイは怯えながら瞬時に離れ柱の影に隠れる。


「ルークを探しに行く前に私の所に寄るようにと伝えていたでしょう?どうして黙って行ったのです。」
「お、お、お、俺みたいな使用人が城にいけるわけないでしょう?!」
「何故逃げるの?」
「ご存知でしょう!?」
「私がルークと結婚したらお前は私の使用人になるのですよ、少しは慣れなさい。」
「むむむむムリですっ!!」


ガイが時折声を裏返しながら柱の裏から出てこないまま答える。
どう良く見繕ってもナタリアがガイを虐めている様にしか見えない構図に、やがて諦めたかのように溜息をついた。


「おかしな人。こんなに情けないのに何故メイドたちはガイがお気に入りなのかしら。
 …それにしても大変ですわねヴァン謡将。」

そこでナタリアは話を切り替えルークに顔を向けた。
出てきたヴァンという言葉にいち早く反応したのはいうまでもなくルークだ。



「師匠がどうかしたのかよ。」


ナタリアの話によれば、今回のルーク失踪の件はヴァンが仕組んだものと疑われており
城に到着し捕まり次第最悪処刑になるかもしれないとのこと。
ルークはそれを聞き陛下にとりなすようにナタリアに懇願した。
ナタリアはルークの必死な勢いに多少気圧されながらも、明日執り成すと約束する。
とにかく全てのことは明日決まる。ルーク達はそのまま城に一晩厄介になった。





翌朝。




「おぉ、待っていたぞルーク。昨夜緊急議会が召集されマルクト帝国と和平条約を締結することで合意した。
 親書には平和条約締結の提案と供に救援の要請があったのだ。
 現在マルクト帝国のアクゼリュスという鉱山都市が瘴気なる大地の毒素で壊滅の危機に陥っているということだ。」


起き抜けに公爵邸専属のメイドがルークに登城するよう伝えてきた。
7年間ずっと厳しい監視の下軟禁されて来たというのに、こんなにあっさりと邸外に出られるようになった事実。
ルークは少なくとも素直には喜べなかった。しかし呼ばれたからには行かなければと陛下の元に着いたとたん矢継ぎ早に説明される。
内心面白くないと思いつつもルークは陛下の言葉に耳を傾けた。



「アクゼリュスは元々わが国の領土当然カイツール側からも街道が繋がっている。そこでわが国に住民の保護を要請してきた。」
「そりゃあっちの人間を助けりゃ和平の印にはなるだろうな。でも俺に何の関係ががあるんだよ。」

興味なさそうにルークが言うと、ルークの父ファブレ公爵が、陛下がルークにキムラスカランバルディア王国の親善大使として任命されたと告げる。
ルークが拒否すると陛下はヴァンの話を持ち出した。
ルークが親善大使としてアクゼリュスへ行ってくれればヴァンを解放し協力させよう。と。
其れを聞きやや納得いかなそうな表情を浮かべるが自分が行くだけでヴァンが解放できるなら、と了承した。





「中央大海を神託の盾の船が監視しているようです、大詠師派の妨害工作でしょう。」

城外にてジェイド、、ティア、ガイ、そしてヴァンと合流したところでジェイドがいった。
それにティアが何か言いたげだったが逃れようのない事実に黙り込んだ。
ジェイドは海へ囮の船を出港させ自分達は陸路でケセドニアに行こうと告げる。
それを聞いたヴァンが自分が囮の船に乗ると進言した。
自分がアクゼリュス救援隊に同行することは発表されているのなら自分の乗船で信憑性は増す、神託の盾は尚の事船を救援隊の本体だと思い込む。
そう言ったヴァンにジェイドはあまり信用しきっては居なかったが他に上策もないため囮を頼んだ。
その場でヴァンと別れルーク達はバチカルの出口へと向かった。
しかしその途中アニスと出会った所で「イオンが謎のサーカス団に連れて行かれた。」とルーク達に言った。
更に厄介な事に街の出口で六神将のシンクが邪魔をしているらしい。



「まずいわ、六神将がいたら私達が陸路を行くことも知られてしまう。」
「ほえ?ルーク様たち船でアクゼリュスへ行くんじゃないんですか?」
「いや、そっちは囮だ。くそなんとかして外に出ないと…。」


ルークの言葉にアニスは自分も連れて行ってくれ、外にさえ出られれば後は自分がイオンを探すから。と頼む。




「六神将はイオンをどうしたいんだ?前は確かセフィロトっていうとこに連れて行かれたよな。」
「推測するには情報が少ないですね、それよりこの街をどうやって脱出するかです。」


ジェイドが難しい声で考えあぐねていたところでが口を開いた。



「私が先にここを出てシンクをひきつけ囮になる。その隙にルーク達はケセドニアに向かえばいい。」
「でも相手は六神将だぞ?いくらでも…」

彼女の提案にガイがすぐさま割り入った。
は冷静にガイに振り返りながら言葉を続ける。



「無論絶対に勝てるとは言えぬ。だが時間稼ぎくらいにはなるだろう。」
「けど…。」
「やれやれ、あなたはマゾヒズムですか。」




『・・・・・・・・・はぁ!?』



更にガイが言葉を濁したところでジェイドが素頓狂とも言われそうな言葉を吐く。
その場にいた以外の全員が驚いた顔でジェイドに振り返った。
しかしジェイドは飄々として眼鏡を直しながら言った。



「確かにあなたが囮になってくれれば時間は稼げるでしょう。
 しかしその間に私達がケセドニアにまで行ってしまえばリングが反応して首が絞まります。
 多少発動を遅らせることも出来ますがそれでも徐々に締まるのは止められません。
 ゆっくりと自分の首が絞まるのを感じながらシンクと戦う気ですか?途中で野垂れ死にますよ。」
「…うぇ〜。」


ルークが、ジェイドが言ったことを想像したのか自分の首に手を添えて言った。


「…そう、だな。よく考慮もせず軽々しく言ってしまった、すまない。」
「待てよ、いい方法がある。旧市街にある工場跡へ行こう、天空客車でいけるはずだ。」


ガイは思いついたように言った。その場に他の案があるわけでもないためにルーク達は言われたとおり工場跡へと向かった。





「バチカルが譜石の落下跡だってのは知ってるな。」


天空客車で工場跡に入ってからしばらくしたあとガイが後ろから説明し始めた。


「此処から奥へ行くと落下の衝撃で出来た自然の壁をつきぬけらるはずだ。」

そこまで言うとジェイドとティアが何かに気付く。



「なるほど、工場跡なら…」
「排水を流す施設がある。」
「そういうこと。ここの排水設備はもう死んでいるが通ることは出来るはずだ。」






「まぁガイ、あなた詳しいのね。」


ガイの言葉にその場に居ただれでもない声がルーク達の背後から聞こえた。
ルーク達が驚いて振り返れば、工場の柱の影からナタリアが颯爽と出てきた。



「なんだお前そんな格好してどうしてこんなとこに…。」
「決まっていますわ宿敵同士が和平を結ぶという大事なときに王女の私が出て行かなくてどうしますの。」
「アホかお前、外の世界はお姫様がのほほんとしてられる世界じゃないんだよ。
 下手したら魔物だけじゃなくて人間とも戦うんだぞ。」
「私だって三年前ケセドニア北部の戦で慰問にでかけたことがありますもの。覚悟は出来ていますわ。」


ルークの必死の反対にも関わらずナタリアは毅然とした態度で反論する。
その様子を見ていたアニスが厭味をこめて口を開いた。


「慰問と実際の戦いは違うしぃ、お姫様は足手まといになるから残られた方がいいと思いま〜す。」
「失礼ながら同感です。」
「ナタリア様、城へお戻りになったほうが…。」


アニスの言葉にティアとガイが更に諭す。
しかしナタリアは一向に下がろうとしないどころか「お黙りなさい!」と一喝した。



「私はランバルディアアーチェリーのマスターランクですわ。それに治療師(ヒーラー)としての学問も修めました。
 そこの頭の悪そうな神託の盾や、無愛想な神託の盾より役に立つはずですわ。」

とアニス、ティアを順に指差し声高に言い切った。
そんな事を言われ当然アニスは黙っているわけがない。



「なによこの高慢女!!」
「下品ですわね、浅学が滲んでいてよ。」
「…勇ましい姫さんだ。」
「なんでもいいからついてくんな!!」


が呆れたように言ったところでルークが言い張った。
ルークの言葉にナタリアはなにか企んでいるような笑みを浮かべて言った。



「あのことをバラしますわよ。私聞いてしまったの、城の牢屋でヴァンとルークが…」
「!?」


そこまでナタリアが言うとルークは慌ててナタリアの腕をひっぱり皆から離れていった。
そこで残されたジェイドたちには聞こえないように何事か言い合ったところで気まずそうに戻ってくる。




「…ナタリアに来て貰うことにした。」
「よろしくおねがいしますわ。  そうそう今後私に敬語は止めてください、名前も呼び捨てにすること。そうしないと王女だとばれてしまいますもの。」


その場に居た全員の、無言の非難の眼をうけつつルークは先に進むぞ!と高慢に言った。





「おいナタリア、もう少しゆっくり歩けよ!」

工場も半ばを過ぎたと思われる所で、道筋を完璧に把握しているかのように先頭を切って歩くナタリアをルークが呼びかけた。
ナタリアは毅然と振り返る。


「なんですの?もう疲れましたの?だらしないことですわね。」
「そ、そんなんじゃねぇよ。」
「うはー…お姫様の癖になにこの体力馬鹿。」
「なにか仰いました?」
「べっつにー?」


アニスの言葉を聞きながらナタリアは、イオンが拐された上に自分達は苦しんでいる人々のために少しでも急がなくてはいけない。
どこか間違っているか?と問う。


「確かにその通りだけど…この辺は暗いからもう少し慎重に進んだほうがいいと思うわ。」
「そうですよナタリア様、少しゆっくり歩きませんか。」
「ガイの言う通りだナタリア。団体行動をとるなら全員がペースを合わせる物、それに…」

はそこまで言うと行き成りレイピアを抜いてナタリアに向かい走った。


「おい、ナタリア後ろ!!」
「え?」

それと同時にルークが叫ぶ、ナタリアが何事かと振り向くと魔物が目の前に迫ってきていた。

「きゃ…」

ナタリアが悲鳴を上げる前にがナタリアの腕を引いて自分の背後に庇い魔物を一瞬で切り伏せた。


「…こういう場合の対処に支障が出ることもある。
 いくらこの場で王族という身分を捨てているとはいえあなたは一国の王女だ、なにかあってからでは遅い。
 もし行動を供にしたいなら突出せずペースを合わせていただきたい、少なくとも其れが団体行動というものだ。」


レイピアをヒュンと振って魔物の血を払って鞘に収めナタリアに振り返った。

「しかし乱暴に腕をひっつかんでしまってすまなかった。」
「い、いえありがとうございます。
 それに貴方の言う通りですわね…ごめんなさい。」


ナタリアは頬を真っ赤に染めながら礼をのべ、逸った自分の行動に謝罪した。



「あれ、案外素直。」
「いちいちうるさいですわよ。」
「やー理解が深まったようですねよかったよかった。」

相変わらず現状を他人事のように眺めながらジェイドが歩き始めた。
がその後ろに続こうとしたところでナタリアが声を掛ける。


「あ、あの。私まだ貴方の名前を伺っておりませんでしたわ…。」
「すまない、私はだ。よろしく頼む、ナタリア。」

その場で一度顔だけをナタリアに向けてそう言い、再び歩き始める。
ナタリアは後方で、紅く染まった頬を両手で覆いながらしばし呆けていた。



「どうしたんだいナタリア。」
「なんて…紳士的な殿方ですの…。ガイ、貴方も少しは見習いなさい!」
「いや、女だから。」
「まぁ!?そうでしたの!?私としたことがなんて失礼な事を…」

ルークの言葉に、若干落胆したような驚愕の声を上げるとナタリアはの元に走りよって謝罪した。





「なんか臭うな…」
「油臭いよう…。」


その後数時間歩き続けいい加減出口が見えてきてもおかしくはないだろうと思っていたところでルークとアニスが言った。
付近に立ち込めていたきつい油のにおいに全員が立ち止まる。



「この工場が機能していた頃の名残かな、…それにしちゃ」
「待って、音が聞こえる…何かいる?」
「まぁ、何も聞こえませんわよ。」
「いえ…いますね魔物か?」
「!ナタリア危ない!!」

ジェイドがそういった直後、ティアが何かに気づきナタリアを押す。
その瞬間、今の今までナタリアが居た場所に巨大な魔物が落ちてきた。
古い油を全身に纏い、巨大なスライムのような格好をしており、なかに本体があるようだったが油の濁った色で判別できない。






「なんだったんだこの魔物はよ。」
「この辺じゃ見かけない魔物だな…中身は蜘蛛だったみたいだぜ。」


動きの鈍い魔物は案外簡単に片付く、そもそもいくら大きくとも1対7では魔物からしてみれば分が悪すぎる。
ルークとガイが口々に疑問を述べているところでが倒れた魔物に近づいていった。



「…油を食料にしているうちに音素暴走による突然変異を起こしたのかもしれない。
 この蜘蛛の中の体液は殆ど油に侵されているようだし…恐らく。」

そこまでいうと蜘蛛の魔物は音素と死んだ核が乖離し光の粒子となって消えた。
その後ナタリアがティアに、助けてくれたことに礼を述べ和解する。
其れと同時に全員の目の先に光が差し込んでいる箇所が写った。
非常口にたどり着きロープを下ろして工場を脱出した。






外は雨が降っていた。





ルーク達の視線の先にはタルタロスと神託の盾にとらわれているイオン、そしてアッシュが居た。


「イオンを返せぇぇぇ!!!」

ルークは腰の剣を抜きながらアッシュに突進して行った。
アッシュは舌打ちして自分の剣を抜きルークの一閃を受け止めそのまま鍔迫り合いが続く。


「!?おまえ…っ?!」


そこでルークが何かに気付いた。
ガイやティア達がルークの元に走り寄る傍らでジェイドとは何も言わずその場で立っている。


「アッシュ!今はイオンが優先だ。」
「わかってる、…良いご身分だなちゃらちゃら女引き連れやがって。」


シンクの言葉に促されアッシュは剣を無防備に収めて背を向ける。
隙だらけだったにも関わらずルークは愕然とした顔でその場に崩れ落ちる。



「…アイツ…俺と同じ顔…」




「…ところで、イオン様が連れて行かれたようですが。」
「あぁ〜!!しまったぁあ!!」

ジェイドがその場の何かを誤魔化すようにいうとアニスが頭を抱えて唸る。
ガイがバチカルに戻り船を使ったほうがと言うが、ナタリアが言うには自分の父はまだマルクトを信用しておらず海からの侵略にそなえ港を封鎖したらしい。

ナタリアの背後でティアはこのまま陸路を行きイオンを探したほうがいいとし、アニスもついででもいいからイオンを助けてくれという。
そこでジェイドがルークに判断を迫った。


「あー!うるさい!大体なんで俺が決めるんだよ!」
「責任者は親善大使である貴方なのでしょう?」
「…厭味なやつだよほんと。…陸路!ナタリアを連れて行かないと色々やばいからな。」


ルークがそういうと一行は陸艦の立ち去った方向から、オアシスへむかったと判断し追いかけることにした。




灼熱の日差しの中ルーク達が漸くオアシスに着いたかと思った途端入り口付近でルークの頭痛が起こりその場にしゃがみ込んだ。
心配そうに近づくティアにガイが幻聴まで聞こえるらしい頭痛を誘拐後から頻繁に起こしていると説明した。
するとルークはキャツベルトの時のように誰かと会話し始めた。
ジェイドが問うとルークはアッシュの声がし、アッシュたちはザオ遺跡に居ると言っていたと告げる。



「ザオ遺跡…2000年前のザオ遺跡のことでしょうか…?」
「それってどこにあるんだ?」
「さぁ?『責任者の方』が探してくださるとありがたいんですが。」
「ちっ、ほんとあんた厭味なやつ。」
「此処から東だ。」


ルークが面倒臭そうにぼやいたところでが口をはさんだ。



「そう大きな遺跡ではないがこのオアシスに所々倒れている石柱があるだろう?
 ザオ遺跡にもそれと殆ど同じ文様の造りになっているから行けば直ぐわかる。」
「そういえばあちこちに倒壊したものがあるわね…。」

ティアが周りを見渡しながら呟くように言った。



「その昔この周辺一体は砂漠ではなかったらしい。それが何かの天変地異で砂漠化した。
 ザオ遺跡のつくりと此処のオアシスの作りから砂漠化する前はこの辺りもザオだったのではないかと言われている。」
「じゃあなんで砂漠になっちまったのに水があるんだ?」
「それはあそこの巨大な譜石だ。何年か前に落ちてきたそれが地下の水脈にまで到達し大きな泉を造ったんだろう。」




『・・・・・・・・。』


ティアやルークの疑問に的確に答えるに全員が固まり、彼女をみた。


「…どうした?」

ってめちゃくちゃ詳しいんだね。もしかして俗に言う遺跡マニアってやつ?」

アニスがニヤニヤとしながら訊ねる。


「…いや、そうではないが…」

俯き言いよどんでいた所でジェイドが口を挟んだ。



「また『知っている理由がわからぬ。何故か知っていた』ですか?」
「・・・・。」

俯き黙り込んだにジェイドは小さく溜息をついた。



「旦那、今のはどういう…」
「いえ、なんでもありませんよ。さぁ行きましょうか。
 よかったですねルーク、歩く百科事典のような知識豊富な同行者が居てあなたはと〜っても楽でしょう?」
「…フン、知ってるなら早く言えっつの、行くぞ。」



ガイの問いをやんわりと流しながら多少の厭味をこめてルークを促す。
ルークは面白くなさそうに鼻を鳴らすと休憩もそこそこに歩き出した。



「・・・・・・・・。」



その一番後ろでガイがジェイドとを見ていたことには誰も気付いていなかった。






→Episode6






今回書きたかったこと


・ジェイドの尋問第二回目・オプション壁際追い詰め

・ヒロインに対するガイの感情の微変化、ジェイドとヒロイン間に流れる独特な空気を気にする様子。

・伏線張りまくりで何故かディストに厳しいヒロイン(後者は単にちょっとギャグ的要素を入れたかっただけ)

・ナタリアを颯爽と助けてうっかり彼女に惚れられるヒロイン(前回のアニスみたいな)

・称号取得『歩く百科事典』(笑)


ちなみにアニスはタルタロスであったときからヒロインが女性って知ってます(ジェイドに聞いた)


さらに補足すればヒロインが被ってる仮面はシンクのと違って、設定にも書いたけどTOD2のジューダスみたいなのです。

だからなんとなく顔全体はみえてます。なので勘が良い人とか判る人には最初から女性とわかる(ジェイドとかヴァンとか)



余談

今回ヒロインが話の中で使った管理人オリジナル譜術「ネレウストライデント」のネレウスはギリシア神話に出てくる海神のこと
ポントス(海)とガイア(大地)の息子

トライデントは同じくギリシア神話の海神として知られるポセイドンの所持する三叉矛の武器のこと



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